「やる気」があれば問題は解決するのか

森博嗣『少し変わった子あります』(文春文庫、ISBN978-4-16-774302-4)148頁より。主人公の大学教官と後輩の会話シーンでの発言。

「気にすることはないさ。やる気なんてものは、誠実な仕事にはまったく邪魔な存在だよ」私は言った。「どんなにやる気があったって、人間は数メートルしかジャンプできない。人を月まで送ったのは、そんな単純でいい加減な意志ではなかったはずだ」

興味深い考察だ。大抵の問題は「やる気」だけで解決することはできないものだ。一方、主人公は「意志」にも着目している点は見逃してはならない。ある問題に直面しているならば、問題解決の意志を持つことは重要なことなのだ。

精神論で物事を進めてしまいそうになるとき、この台詞を思い出すことは有意義であろう。 

少し変わった子あります (文春文庫)

少し変わった子あります (文春文庫)

 同僚に紹介された不思議なレストランに通うことになる主人公。毎回違った女性と食事をとるという体験の中で、自身のもつ考えを深めていく。時には新たな知見を獲得する。読者もまた、主人公の思考を追体験していくことになる。哲学的な小説である。